ひとこと言わせて
President’s Mutter

業界誌寄稿3 包装技術 2011/5月号掲載文

業界紙掲載文

公開日時:2011.05.10

■逆ルックイースト?・・・

ストラパック株式会社
代表取締役 下島敏男

今年の2月ベトナムと十数年ぶりにシンガポールを訪問しました。かつて30年程前にマレーシアのマハティール首相は「ルックイースト政策」を提唱しました。バブル崩壊やリーマンショックの影響があったとはいえ、この心地よい言葉に酔いしれて、この30年間にどれだけ日本が進歩できたのか、今回特にシンガポールに滞在して、大きく反省する必要を痛切に感じました。

かつて社会主義政治体制をとっていたが、自由経済体制に変わった国々を訪問すると、個人企業はとてもまぶしく感じます。一方自動車や家庭電化製品の普及も盛んで、その消費市場の拡大もうらやましく思います。街をゆく自動車は、かつて日本名の看板の入った中古車が沢山走っていましたが、最近では新車が急激に増えています。でもブランドはヒュンダイ(現代)とかデェウ(大宇)といった韓国メーカー、テレビや洗濯機、エアコンなどもサムソンとかLGがホテルの什器備品を占拠しています。またタイや中国の私どもの海外の工場の協力企業には日本製の最先端をゆくNC、MCの工作機械がところ狭しとならび、単体の機械だけでなく工場全体を管理する総合的なシステムで導入している工場も見かけます。またお客様である現地の日系工場でさえ、当初の日本製設備から買換期になると台湾製の機械を導入する工場が増えています。

このように大きく変わろうとしている元気な地域が沢山あるのに、日本は意気消沈し多くの人々に停滞感が蔓延しています。日本人の多くは、今の日本を改革しなければならないことは分かっていますが、自由経済を享受している日本にありながら、保護主義を守ろうという旧体制勢力や些細な反論に気を遣って何もできない政治家が多くて、あらゆる面で問題を先延ばしにしていたのが現状ではなかったでしょうか?

シンガポールの国家財政は、税金は低くても、他国に投資したリターンがあって完全に黒字、最近全国民に数百ドルを配ったとのこと、赤字国債で子ども手当を配る国とは大違いです。産業立国を基本として、ハイテク研究者を海外から集めるべく環境や整備を整えた研究機関を作り、産業のみならず工業も誘致するなど、多少独裁的であっても、信じることを徹底してやっているリーダーのいる国のやり方や、発展している市場で成功している国々のメーカーの手法を謙虚に学ぶ必要が出てきていると思います。

3月11日に発生した大地震と津波、不幸にして大きな災害となった東日本大震災で表面に出てきた、世界のメーカーを支えているのが、日本の工業製品や部品であったこと、災害で混乱しても日本人の秩序ある行動など、日本人としての誇りあるDNAが残っていたことから、まだまだ日本も捨てたものではありません。まず第一に自信をとりもどして、日本が産業立国であることの基本を忘れずに、一日も早く被災した東日本の復旧復興を、そして私たち日本人が一致団結して、それを推進すると同時に、新しい日本の再興と確立をするきっかけにして行くように、私たちの小さい力でも日々努めて行きたいと思います。