ひとこと言わせて
President’s Mutter

原子力発電について考える

ひとりごと

公開日時:2012.03.21

 東日本大震災の惨事から一年経過しましたが、福島原子力発電所の破壊による問題がズーッと後を引いています。政府の指示していることやマスコミが取り上げていることがすべて正しいのか、正直わかりません。本屋に行って勉強しようとしても、どの本を選んだら正しいのか、あまりの数の多さに選ぶ気になれないのが今の私の心境です。

 私は今原子力発電問題について全くの素人ですし、私の個人的な意見ですが、こう考えています。私の寿命は、放射能の影響によって死ぬのと、寿命で死ぬのと、どちらが早いか?多分寿命で死ぬ確率のほうが高いでしょう。 日本の厚生省が発表している平成22年度の平均余命は、私の年齢の人は昨年より少し伸びて10.37年となっています。あと10年の寿命であったら、少しぐらいの長生きを心がけるより、出来ればこの10年を、原子力の影響を実証するのに役立つように使ってもらってもいいと思います。

 今から半世紀前私の小学生時代、広島・長崎に原子爆弾が投下され、両市は焼け野原になる被災を受けました。当時被爆地は何十年、草木も生えないだろうと聞きました。でも現実には完全に復興して緑豊かな街になり、唯一原爆ドームにその痕跡を見るだけです。被爆手帳を持つ知り合いの方がおられますが、何人かは私達より長命で、ご子息やお孫さんなど元気にしておられます。

 終戦から何年か経って水素爆弾の実験がビキニ環礁で行われ、第五福竜丸に船員さん達が被災しました。なくなられた方がおられたようですが、その後その船員さん達の後遺症についての話をあまり聞くことはありません。当時だったと思いますが、築地魚市場に着いたマグロが汚染していると問題になりました。それから何年か経ってからでしたか、東京包装材料商業組合のセミナーに、公害問題の大家の宇井純さんに来てもらって「包装と公害」というテーマで話をしてもらいました。講演の中で放射能汚染マグロは食べない方が良いといわれましたが、終わってからの懇親会に出てきた料理のマグロのお刺身を、「こんなに旨いものを食べない訳にはゆかない」とおいしそうに食べられたのが大変印象的でした。

 それに今回の原子力発電所の破壊問題です。日本での発電方法はいくつかあります。かつて石原裕次郎主演の映画になった「黒部の太陽」に代表される水力発電、石炭や化石原料を輸入して燃やしての火力発電や風力発電、日本に沢山ある温泉を利用しての自然の地熱発電などなど、しかし、現在の日本国内で使われる膨大な電力需要を満たすのに原子力発電を無視するわけにゆきませんし、すぐにやめる訳にはいかないと考えます。誰もが原子力利用は直ぐに止めるべきだと簡単に言うことは出来ますが、いま日本が世界中で一番経済的に恵まれた生活が出来ているのは、産業立国であるという重要な基本的視点が多くの日本人に欠落しているのではないでしょうか? 清貧の生活を覚悟するのであればともかく、日本が稼がなければならないことをきちんと認識し、産業立国の根本が失われることは避けなければならないでしょう。ましてや、今回の電力料金値上げが持ち上がってきました。国内で生産コストが高いために、海外に工場が出て行っています、円高に加え、それに追い打ちをかけるようなコストアップの現実には困ったものです。東電が責められても仕方ありません。彼らは独占で価格を好きに決めています。ボーダレスの価格競争を無視し、無駄なコストを削減する努力をしていないと思います。東電の電気料金の値上げは東電の権利だというような、独善的な過去の誤りは正してもらいたいと思います。日本の国の弱体化を避け無ければなりません。ここはならぬ堪忍するが堪忍で、ひとまず日本の産業が海外に行かざるを得ないような電力料金の値上げをするべきではありません。同時にこういう状況の中でも、我々日本人に寛容や惻隠の情、思いやりの精神があっても良いのではないでしょうか?

 放射能汚染の疑いがあるから祭りに使う災害地の薪を拒否し、被災地の瓦礫の処理も住民の反対があるからと各地の市町村が拒否するというのは、口では東北を支援しようと格好いいことを言っても、本心は自分だけ良ければ災害地の人はどうでも良いという考え方で、抵抗を感じます。福島の娘を嫁にもらうなという風評が出ていると聞きましたが、こんな風評を信じて、東北地方の製品を忌避していたのでは、東北の被災地の人々への支援にはなりません。瓦礫受け入れを一番に実行している東京都の石原知事の決断にようやく続こうとする気運が出てきたことは、やはり日本人だとこの心意気をうれしく思いますが、まだ野田首相が各地区に呼びかけなければならないのにはがっかりします。

 ロシアのチェルノブイリ事件後にロシアの要請で、日本財団の当時の笹川良一氏が決断して人体に対する調査を長期間にわたって行い、その調査報告が公開されていているということを、最近日下公人氏の著作で知りました。この本を読むと今のマスコミや政府の言っていることはかなり神経過敏の過剰反応のように感じます。原子力発電をやめるにしても、現実を勘案して、代替の発電方法を早く決めて、段階的にシフトしながら原子力発電を減らしてゆくべきでしょう。今直ぐに代わる方法が無いのであれば、今まで半世紀余り世界で一番原子力の被害を経験している日本が、今までの原子力発電の経験と研究成果を有効に使って、より安全な原子力発電の技術を率先して進歩させるべきではないでしょうか?最近韓国の企業が、東電の原子力発電に関わる技術者を引き抜きに走り、発展途上国に原子力発電設備の輸出を狙っているとの報道もあります。次の有効な発電方法が決まるまで、必要悪であると現状を是認して、今以上に安全を追求する技術革新を進め、住民が安心する方法を早く考えてもらうために、私、ゴールデンシルバー族は人身御供になっても良いのではないか、と思っています。