ひとこと言わせて
President’s Mutter

感激した一日

ひとりごと

公開日時:2011.07.27

7月中旬九州出張の週末を利用して九重・飯田高原の「坊がつる」まで緑の草原と森林浴を十二分に楽しんできました。せっかく九州に来たので、かねて知人から薦められていた杖立温泉のK荘に泊まりました。

この宿は140年前から旅籠として旅の人を泊めてきたそうです。レンタカーで夕方6時頃到着すると、ロビーにしては小さな部屋でお茶をいただき、「いまお泊まりいただく予定をした座敷の冷房が壊れて修理中なので、直るまでしばらくこの部屋でおまちいただき、その間お風呂にゆっくりと浸かって下さい」といわれて、余り大きくないツインベットの部屋に通されました。後で聞くと、この部屋は通常の客室ではなく、工事などで長期に滞在する人を泊める部屋だそうでした。お風呂は98度という源泉を持ち、自然の蒸し風呂もある温泉を堪能して部屋に戻ると、済まなそうな顔をした女将さんが、どうしても冷房が直らないので今別のお部屋にご案内しますというので、我々老人夫婦はお座敷の畳に敷いた布団に寝るのより、ベットの方が楽なのでこの部屋にしてくださいとお願いして、このこじんまりした若干奇妙な感じの部屋に泊まることにしました。

想像するのに、大型の温泉旅館もあり、旅行客の嗜好の変化や競争の激しいこの杖立温泉のなかで、旅館として事業を継続するために、差別化を図っているのでしょう。客室は6室しかなく、そのうちいくつかは離れになっていて露天風呂がついているそうです。お客様にゆっくりと落ち着いた雰囲気の中にくつろいで泊まってもらい、料理に特徴をだすという経営方針を立てたのでしょう。今の7代目当主が京都に料理の修業に行ってきたそうで、料理は聞いては居ましたがとても見事な素晴らしいものでした。材料はほとんどが現地産のものを使い、料理に合わせて器も新旧混ぜて、中には古伊万里の『なます皿』をつかうなど、味も心配りも見事な夕食をいただきました。翌日の朝食もバラエティに富んでいて、我々老夫婦には多すぎるくらいでした。

チェックアウトをお願いすると、チャンとしたお部屋に泊められなかったから今回は(無料)ただで結構です。私達は家族で経営しているので大きな経費がかからないので、次回いつでも結構ですから是非もう一度来て下さいと招待券も下さるのです。いくらなんでもただは無いでしょうと、予約の金額をお渡ししようとしても受け取りません。何度か押し問答の末、「私は親の遺言で、人生借りを作ってはいけないと云われているから」と無理矢理気持ちの金額を受け取ってもらいました。

九州の山奥の鄙びた温泉地の小さな旅館でも、このようにお客様に心のこもったサービスをしていることに、大変驚くとともに、大変感激を致しました。「私は金婚式の年に、新婚旅行と銀婚式の年に登った鹿児島の開聞岳に再度二人で登ることを目標にしているので、二年後にかならず泊めていただきます」と約束して旅館を後にしました。その日は本当に嬉しい一日でした。

いろいろな絵柄のなます皿